高次脳機能障害と労働災害

労災保険の障害認定基準

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労災認定基準では,まず,介護が必要か否かで大きく分けます。
そして,介護まで必要とならない場合には,次の「4能力」の低下について,高次脳機能障害整理表をもとに6段階で評価します。
意思疎通能力(記銘・記憶力,認知力,言語力等)
問題解決能力(理解力,判断力等)
作業負荷に対する持続力・持久力
社会行動能力(協調性等)
 
そして,3級から14級までの等級格付けを行います(4能力+6段階評価)。
 
複数の障害が認められるときには,原則として障害の程度が一番重いものを見て評価します。
例えば,意思疎通能力について第5級相当の後遺障害,社会行動能力について第7級相当の後遺障害,問題解決能力について第9級相当の後遺障害が認められるときは,一番重い意思疎通能力の後遺障害の5級2号として認定します。

 

自賠責保険と労災認定基準との整合性

自賠責保険の後遺障害等級認定は,原則として労災認定基準に準拠しています。
しかし,労災保険が就労者のみを対象とするのと異なり,自賠責保険の被害者には高齢者や幼児など非就労者も含みますので,両者の整合性が問題になります。
 
この点,自賠責保険の平成19年報告書は,就労者である成人の被害者について,「従前の考え方を用いて後遺障害等級を認定した後,労災保険で使用している「高次脳機能障害整理表」に当てはめて検証し,最終結論とすることが労災保険に準拠する自賠責保険としての妥当な認定方法と考える。」としています。
つまり,自賠責保険の基準で後遺障害の等級を認定する場合に,労災保険の基準でも検証しながら結論を出すということです。
 
なお,非就労者である小児及び高齢者については,同報告書は「その特有の事情を反映し,労災認定基準に関する解釈を微修正することが適切な等級認定につながるものと考える。すなわち,小児は事故後の各種能力(学習能力等)の獲得や集団生活への適応能力に与える高次脳機能障害の影響を勘案し,また,高齢者は,加齢による症状の変化を勘案した上で妥当な後遺障害等級を認定すべきである。」としています。
 
 

労災保険の高次脳機能障害整理表

上記の要点を踏まえ,4能力それぞれの喪失や低下の有無・程度について「高次脳機能障害整理表」をもとにA~Fの6段階で評価します。

    意思疎通能力(記銘・記憶力,認知力,言語力等) 問題解決能力(理解力,判断力等) 作業負荷に対する持続力・持久力 作業負荷に対する持続力・持久力
A
多少の困難はあるが概ね自力でできる
 
→わずかな能力喪失
(1)特に配慮してもらわなくても,職場で他の人と意思疎通をほぼ図ることができる。
 
(2)必要に応じ,こちらから電話をかけることができ,かかってきた電話の内容をほぼ正確に伝えることができる。
(1)複雑でない手順であれば,理解して実行できる。

(2)抽象的でない作業であれば,1人で判断することができ,実行できる。
概ね8時間支障なく働ける。 障害に起因する不適切な行動はほとんど認められない
B 困難はあるが概ね自力でできる

→能力が多少失われているもの
(1)職場で他の人と意思疎通を図ることに困難を生じることがあり,ゆっくり話してもらう必要が時々ある。
 
(2)普段の会話はできるが,文法的な間違いをしたり,適切な言葉を使えなかったりすることがある。
AとCの中間 AとCの中間 AとCの中間
C
困難はあるが多少の援助があればできる。
 
→能力の相当程度が失われているもの
(1)職場で他の人と意思疎通を図ることに困難を生じることがあり,意味を理解するためにはたまには繰り返してもらう必要がある。
 
(2)かかってきた電話の内容を伝えることはできるが,時々困難を生じる。
(1)手順を理解することに困難を生じることがあり,たまには助言を要する。
 
(2)1人で判断することに困難を生じることがあり,たまには助言を必要とする。
障害のために予定外の休憩あるいは注意を喚起するための監督がたまには必要であり,それなしには概ね8時間働けない。 障害に起因する不適切な行動がたまには認められる。
D
困難はあるがかなりの援助があればできる
 
→能力の半分程度が失われているもの
(1)職場で他の人と意思疎通を図ることに困難を生じることがあり,意味を理解するためには時々繰り返してもらう必要がある。
 
(2)かかってきた電話の内容を伝えることに困難を生じることが多い。(3)単語を羅列することによって,自分の考え方を伝えることができる。
CとEの中間 CとEの中間 CとEの中間
E
困難が著しく大きい
 
→能力の大部分が失われているもの
(1)実物を見せる,やってみせる,ジェスチャーで示す,などのいろいろな手段と共に話かければ,短い文や単語くらい理解できる。
 
(2)ごく限られた単語を使ったり,誤りの多い話し方をしながらも,何とか自分の欲求や望みだけは伝えられるが,聞き手が繰り返して尋ねたり,いろいろと推測する必要がある。
(1)手順を理解することは著しく困難であり,頻繁な助言がなければ対処できない。
 
(2)1人で判断することは著しく困難であり,頻繁な指示がなければ対処できない。
障害により予定外の休憩あるいは注意を喚起するための監督を頻繁に行っても半日程度しか働けない。 障害に起因する非常に不適切な行動が頻繁に認められる。
F
できない
 
→能力が全部失われているもの
職場で他の人と意思疎通を図ることができない。 課題を与えられてもできない。 持続力に欠け働くことができない。 社会性に欠け働くことができない。

 

労災保険の障害認定基準

介護・監視の要否と整理表で評価された4能力の低下の程度によって,以下のとおり障害認定基準の区分に当てはめます。

等級 認定基準
1級
「高次脳機能障害のため,生命維持に必要な身のまわり処理の動作について,常に他人の介護を要するもの」
 
以下の(a)または(b)が該当する。
(a) 重篤な高次脳機能障害のため,食事・入浴・用便・更衣等
         常時介護を要するもの
(b) 高次脳機能障害による高度の認知症や情意の荒廃があるため,
         常時監視を要するもの
2級
「高次脳機能障害のため,生命維持に必要な身のまわり処理の動作について,随時介護を要するもの」
 
以下の(a),(b)または(c)が該当する。
(a) 重篤な高次脳機能障害のため,食事・入浴・用便・更衣等
         随時介護を要するもの
(b) 高次脳機能障害による高度の認知症や情意の障害,幻覚,妄想,頻回の
         発作性意識障害のため随時他人による監視を必要とするもの
(c) 重篤な高次脳機能障害のため自宅内の日常生活動作は一応できるが,
         1人で外出することなどが困難であり,外出の際には他人の介護を
         必要とするため,随時他人の介護を必要とするもの
3級
「生命維持に必要な身のまわり処理の動作は可能であるが,高次脳機能障害のため,労務に服することができないもの」
 
以下の(a)または(b)が該当する。
(a) 4能力のいずれか1つ以上の能力が全部失われているもの
(b) 4能力のいずれか2つ以上の能力の大部分が失われているもの
5級
「高次脳機能障害のため,きわめて軽易な労務のほか服することができないもの」
以下の(a)または(b)が該当する。
 
(a) 4能力のいずれか1つ以上の能力が大部分失われているもの
(b) 4能力のいずれか2つ以上の能力の半分程度が失われているもの
7級
「高次脳機能障害のため,軽易な労務にしか服することができないもの」
以下の(a)または(b)が該当する。
 
(a) 4能力のいずれか1つ以上の能力の半分程度が失われているもの
(b) 4能力のいずれか2つ以上の能力の相当程度が失われているもの
9級
「通常の労務に服することはできるが,高次脳機能障害のため,社会通念上,その就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限されるもの」
高次脳機能障害のため,4能力のいずれか1つ以上の能力の相当程度が失われているものが該当する。
12級
通常の労務に服することはできるが,高次脳機能障害のため,多少の障害を残すもの」
4能力のいずれか1つ以上の能力が多少失われているものが該当する
14級
通常の労務に服することはできるが,高次脳機能障害のため,軽微な障害を残すもの」
MRI,CT等による他覚的所見は認められないものの,脳損傷があることが 医学的にみて合理的に推測でき,高次脳機能障害のためわずかな能力喪失 が認められるものが該当する。


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